がん患者の家族の苦悩

家族の病気サポート録

朝晩は外気温が10度以下となり、空気は澄んでいるけれどヒンヤリと冷えます。

秋から冬へのこの時期は、毎年のように夫が白血病と言われた頃を思い出します。

特に秋のバラの花が咲いている様子を見ると、胸がギュっと掴まれ息ができないような感じになります。

夫の治療をしてくれた病院には、いまでも月に1回通っています。他の季節はさほど感じないのに、この時期はいつも苦しくなるのです。

あの頃、治療が始まったばかりの夫の元へほぼ毎日のように地下鉄駅から地上に出て歩いて病院へ向かいました。美しいバラの花が車道の分離帯に咲いていました。あまりにも見事なその赤やピンクや黄色のバラを見ながら、何故夫が?これからどうしよう?子供達はどうなる?と考えたものでした。

夫の前では気丈に、子供達の前では普段通りに振る舞い、あまり泣き言は言わないようにしていたつもりですが一人になると不安が押し寄せてきました。その頃はバスや列車の中などでは涙が止まらず泣いていました。あまり家族の前では泣かないようにしていたせいからか、一人の時は感情が溢れていました。

夫の病室に着くまでの時間はいつも頭の中が不安でいっぱいになり、それでも考え過ぎちゃ駄目だ、私が精神的に病んだら子供達はどうすると気持ちを抑えながら歩いた病院への道。

“癌患者を持つ家族は本人と同じように精神的混乱をまねき、不安から鬱症状となることがあります。

一人で不安を抱え込むことないよう友人や他の家族、もしくは専門家に話をして助けを求めましょう。

大きな声で泣きましょう。そして時には笑いましょう。

深呼吸をゆっくり行いましょう。

自分に優しくしましょう。そして自分を褒めましょう。”

「家族が癌といわれたら」という小冊子に書かれていたものです。夫の入院後、看護師さんから渡されました。この冊子を渡していただき救われました。

私は当時18歳、16歳、6歳の子供と、両親、夫の兄弟たち、友人、仕事の同僚に支えられて乗り越えてきました。それでも、私はこの時期になると苦しく、あの日々を思い出します。これって何なのかな。記憶の切れ端?

この後、元気だった父が肺癌末期で見つかり約3か月で亡くなりました。その後には大学院生だった息子に悪性リンパ腫がみつかり長い日々治療に入りましたが現在は寛解し働いています。

家族の病気は本人でないからこその苦しみがあります。本人でもないのに苦しいなんてと自己否定や自己嫌悪される方もいらっしゃるかと思います。私もそうでした。

だからこそ、今は患者さんの家族を想う気持ちが強くなった私です。共に病気を乗り越えるためにチカラを合わせているのですから、患者さん同様に声をかけ悩みに耳を傾けたいと日々思い仕事についています。

夫は今日も元気に仕事に行っています。有難いことです。

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